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パリところどころ。*ロダン美術館* [パリ2007*Paris]


1730年に建てられた、このロココ様式が美しいビロン館は、
数々の所有者を経たのち、フランス国家に寄贈されたロダンの作品と、
彼の美術コレクションを展示するロダン美術館として、1919年に開館しました。

館内に入ると、いきなり、The Japanese Dreamと題されたエキシビジョンが催されておりました。


Hanako Mask Type D 1907-1908年
日本からパリに渡り、芸者あるいは女優として活躍していたというHanakoの肖像。
この苦虫を噛み潰したような表情の同じタイプの頭像がいくつも展示されていまして、
そのあまり美しくない様子に、同じ日本女性としては快い気分ではいられなかったのですが、
パンフレットの解説によりますと、これは普通一般的な”肖像”ではなく、
彼女が舞台で”ハラキリ”を演じていたときの、”恐怖”と”痛み”を表しているとか。
つまり、アトリエで彼女に演じさせながら作成したのかもしれません。

久保田は花子を紹介した。
ロダンは花子の小さい、締まった体を、不恰好に結った高島田のいただきから、
足袋に千代田草履を穿いた足の尖(さき)まで、
一目に領略するような見方をして、小さい巌畳(がんじょう)な手を握った。
久保田の心は一種の羞恥を覚えることを禁じ得なかった。
日本の女としてロダンに紹介するには、
も少し立派な女が欲しかったと思ったのである。

~森鴎外 著  『花子』より~


『青銅時代』  1877年 ブロンズ
“肉体的には完璧であるが、精神的にはまだ未熟な状態”を表しているそうです。
パリのサロン(官展)に出品するも、あまりにも精巧に作られているため、
人間から鋳型を取って作成したのではないかという、
疑惑と非難を浴びせられたそうで、このとき、ロダンはかなり心に深い傷を負ったとか。。。
肉体の描写もさることながら、かすかな吐息が聞こえてきそうな表情に、
私は特に眼を奪われました。
この顔、どこかで観たなぁ…と、ずっと悩んでいてやっと思い出しました!


(左)空也上人    (右)青銅時代
↑ (^m^)


『ダナイード(ダナイデス)』  1889-1892年 大理石
ダナオスの娘たちが、父と覇権を争う叔父の息子たちと結婚し、
初夜の床で夫の首をはねてしまう、というギリシャ神話から着想を得た作品。
これは、その罪のため、永遠に穴の開いた甕(かめ)に水汲みをするという罰を与えられた娘の一人である、ダナイードが疲れ果ててうずくまるシーンを表しています。
他の作品にも観られるように、荒削りな石の部分と滑らかな人体が、
溶け合っているような表現が幻想的で美しいですね。


体の流麗なシルエットに目が行きがちですが、
この絶望感に満ちた表情も鬼気迫るものがあって素晴らしい。。。


『洗礼者ヨハネ』
なんて美しいヨハネなのでしょう~。
この首を前に、サロメが喜びのあまり顔を歪めた様が、
狂喜乱舞した姿が目に浮かぶようです…そのキモチが分かるような…(怖)


『Le Sommeil』
これは日本の作品名が不明なのですが、多分、
後に大理石で作られた『眠り』の雛型ではないでしょうか。
よくアンデスあたりで発見される、安らかに眠る少女のミイラを思わせるものがありますね。


『考える人』  1880-1904年 ブロンズ
ロダンの作品中、最も世に知られているブロンズ像。
窓からの柔らかな光に包まれて、考えているというよりは居眠りしているようにも見えました(^^)


『考える人』  ムンク画
この美術館には、ロダンが生前に集めた美術品も展示されており、
中でもゴッホの『タンギー爺さん』は、この美術館の名物のひとつといえるでしょうか、
とても人気を集めているようです。


(左)『壮年』  1898年  (右)『波』  カミーユ・クローデル作 1897-1898年 
ロダンを語るときに欠かせない存在の、
弟子であり愛人でもあったカミーユ・クローデルの作品の展示もありました。
今回は撮影してきませんでしたので、これは資料からの写真です。
彼女の作品ではやはり、ロダンとの別離を表したといわれている『壮年』が有名ですけれど、
高さ62cmのこのミニチュアの世界の作品『波』が私は好きです。

しかし、作品は素晴らしくとも、彼女の性格は好きになれないんですよね(;^^)
苦労の時代を支えてくれた内妻のいるロダンと恋に落ちたことはともかく、
その内妻ローズを、老いた醜い女性として揶揄したイラストを描いたことが、
好きになれない理由です。
まあそれだけ自分に自信がなかったことの現われと思えば憐れではありますが。。。

あまりにも激しいロダンへの熱情のためでしょうか、自らの作品も、
ロダンのそれと容易には区別がつかず、はっきり言ってさほどの個性がなく、
後年もロダンの○○という形容詞がいつでもついてまわり、
またはその程度の評価しかされずにいるのは、やはり報いを受けていると思えてなりません。
同じくロダンのアトリエで薫陶を受けたブールデルやブランクーシは、
確固たる独自のスタイルと地位を築き上げていることを思えば、
更にそれがあきらかではないでしょうか。

…と辛らつに言ってしまいましたけれど、
彼女がいなければ、ロダンのあの甘美な傑作は生まれなかったでしょうし、
又、結局は別れてしまうわけですから、酷い言い方をすれば、
ロダンの創作のインスピレーションのために、意図的ではなくとも、
利用されたようにも思えて可哀想な女性ですね。


館内からの庭園の眺め。
アパルトマンがひしめくパリの街中に、
これほど広い敷地の邸宅と庭園があるとは、外からは全く想像ができませんでした。
まるでオアシスです。


庭園の両脇には、作品と共にベンチがしつらえてありまして、
のんびりと散策しながら彫刻を眺めることもできます。


『地獄の門』  1880-1917年 ブロンズ
原型はオルセー美術館に所蔵されています。
この作品から、『考える人』、『ダナイード』、『接吻』など、数々の独立した傑作品が生まれました。


庭園には薔薇が美しく植えられていました。
5月あたりの満開の時期にはさぞかし見ごたえがあるでしょうね(^^)


『バルザックに捧げるモニュメント』  1891-1898年 ブロンズ
文芸家協会からの注文でしたが、その仕上がりが不評で、
結局は受け取りを拒否されたという作品。

“近代彫刻の父”と呼ばれ、押しも押されぬ芸術界の巨匠であるロダンですが、
彼の人生は、栄光と屈辱を繰り返したものだったといえるでしょうか。

子供時代は、才能がありながら、極度の近視のため国立美術学校には入学できず、
サロンに出品すれば、作品の素晴らしさを讃えられる一方で、人型ではないかと疑惑を持たれ、
名を知られるようになってからも、注文により作成した『カレーの市民』などは、
自ら望んだ展示方法を完全に無視されてしまったり、
そしてこのビロン館をロダン美術館とすることにも、最後まで根強い反対があったとか。。。

しかしやがては、理解有る人々の尽力によってこのように立派な美術館を開館し、
入魂の作品群は散逸の危機を逃れて、ここに永遠に保たれることとなりましたので、
最終的には報われたといえるでしょう。
また彼自身も、苦楽をともにし、紆余曲折を経て正式に結婚した妻ローズとともに、
今はムードンのお屋敷内のお墓にて、安らかに眠っているそうです(^^)

「私はゲーテと違い、光を求めず、不思議な洞窟の神秘を選ぶ。」

~ロダン ドキュメンタリーDVD『ロダン あるがままに』より~



ロダン あるがままに

ロダン あるがままに

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • 発売日: 2006/04/28
  • メディア: DVD


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ロダンは、どちらかというとあまり興味の無い作家だったのですが、『洗礼者ヨハネ』は、素晴らしいですね!
カミーユ・クローデルに関しては、ミカエラ さんと同意見です。イザベル・アジャーニ目当てで、映画『カミーユ・クローデル』を見たときもそう思いました。(笑)
by (2007-11-30 00:25) 

ミカエラ

■lapisさん、こんにちは♪

>>ロダンは、どちらかというとあまり興味の無い作家だったのですが、『洗礼者ヨハネ』は、素晴らしいですね!
↑実は私もあまり好きではなかったのですが、
何と言いましょうか、未完の美しさのようなところに、いつしか惹かれるようになりました。
この苦悶の表情のヨハネいいですよね!
この美術館で初めて観たのですが、この首を前にして、
私もサロメよろしくしばらく陶酔に浸っておりました。。。(怖)

イザベル・アジャーニ、いくつになっても美しくて素敵な女優さんですよね(^^)
なるほど、ロダンを惑わすファムファタル役ですか。
彼女なら納得ですね~。
次第に精神を病んでゆくところなど見事に演じられているのでしょうね。
by ミカエラ (2007-11-30 20:50) 

うたのひと

最近ロダンについて、知りたいと思っていました。
ミカエラさま、ありがとうございます^^
by うたのひと (2007-12-11 19:43) 

ミカエラ

■うたのひとさん、こんにちは(^^)
お返事おそくなってしまいましてすみませんでした。

そういえば、今思ったのですけれど、ロダンの官能的で劇的な世界は、
オペラのそれと相通ずるところがあるかも知れませんね!
ご紹介したDVD『ロダン あるがままに』も、
機会がございましたらぜひレンタルでもなさってみて下さい。
更にロダンについて理解が深まることと思います(^^)
by ミカエラ (2007-12-14 15:35) 

カポ

こんばんは、ご無沙汰してしまい申し訳ありません。
先日はバースデーのお祝いの言葉と ジェジェの素敵な画像をありがとうございました。
大切に保存させて頂きました(^^ゞ)

パリところどころ、今回はロダン美術館ですね。
館内からの庭園の眺めの素晴らしさ、そしてその場に咲くオールドローズ。
美術品の数々はもちろんのこと、溜息がこぼれます・・。
日本の文化を好むフランス人も多い中で このHanakoさんのMaskは日本人として如何なものかと思いましたが(笑)、ミカエラさんお解説を読んで やはり只事では無い表情だと知り、ちょっと納得(^^;)
ダイナードと言い、ヨハネもLe Sommeilも・・、その表情を読み解くのは興味深いですね。
ミカエラさんの解説に引き込まれます。

そして、「カミーユ・クローデル」。
この映画はアジャーニのものですね、アジャーニそのもの(笑)
アジャーニって どんな「愛の物語」もドロドロにしてしまうのね、素晴らしいです!(誉めています~)

それにしても ここの美術館は館内撮影OKなんですね。
ミカエラさんテイストの素敵な画像の数々、堪能させて頂きました~(^^ゞ)

あ、メリー・クリスマス♪
by カポ (2007-12-25 20:27) 

カポ

追伸:
ミカエラさん、体調は如何ですか?
寒いですし乾燥している中、体調管理も大変ですよね。
どうぞ、ご自愛下さいネ。
復活、お待ちしています~o(^◇^)/~
by カポ (2007-12-25 20:31) 

ミカエラ

■カポさん、こんにちは(^^)
せっかくコメントいただきましたのに、お返事が大変遅くなりまして、
本当に申し訳ございませんでした! 心からお詫び申し上げますm(_ _)m

>>館内からの庭園の眺めの素晴らしさ、そしてその場に咲くオールドローズ。
↑オールドローズはレースのように繊細な花びらが美しいですよね。
また、例えば“ピンク”とか“オレンジ”とかはっきりと言えないような、
微妙~なニュアンスの色合いが上品で素敵です☆

>>このHanakoさんのMaskは日本人として如何なものかと思いましたが(笑)、
↑ですよね~、しかもこれがひとつやふたつでなく、
同じような表情のものが10個くらい展示してありまして…
これを眺めていた私の顔も、きっと不快感で同じように醜く歪んでいたに違いありません(;^^)
それから、ここだけのお話しですけれど、
歌川広重だったかの春画も展示してありまして、
そんなのも恥ずかしかったです(;^_^)

>>そして、「カミーユ・クローデル」。
この映画はアジャーニのものですね、アジャーニそのもの(笑)
↑カポさんもご覧になったのですね、羨ましいです。
この作品でアカデミー賞にもノミネートされたようですし、
彼女のクローデルに心を動かされた方々が多いようで、
アジャーニ渾身の作品なのでしょうね、私も観たいです。
また、ロダン役にジェラール・ドパルデューさんですか!ナイスキャスティングではないですか?
クローデルの情熱に翻弄され手に負えなくなっている姿が目に浮かびます(^m^)

by ミカエラ (2008-04-03 18:34) 

sasaki

カミーユ・クローデルの発病後の「豊かな表情を失った」作品に関心があります(職業がら)。 そのような作品の写真は収蔵されておられませんか?


by sasaki (2012-06-15 18:40) 

ミカエラ

■sasakiさま、こんにちは♪

せっかくコメント下さいましたのに、お返事大変遅くて申し訳ございません!

当時ロダン美術館で購入した図録にも、手持の資料にも、
残念ながらそのような作品はみつかりませんでした。。。お役に立てずすみません。

クローデルとは全く関係ないですが、現在、トレチャコフ美術館所蔵の、
イリヤ・レーピンの作品展が開催中ですね、ご存知でしょうか(^^)

彼の作品には、気魂がぎゅっと封じ込められているというのか…
それが溢れんばかりに迫ってくるものがあります。

渋谷で開催されている展覧会に行く予定ですが、
彼の作品群に囲まれたら、きっと、
すご~~く怖いホーンテッドマンション(ディズニーランドの)を、
体験している気分になれるだろうなと思います(笑)

レーピン展↓
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_repin/index.html

by ミカエラ (2012-09-16 19:40) 

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